研究助成プログラム

助成研究テーマ

平成30年度タカタ財団研究助成

公益財団法人 タカタ財団の平成30年度研究助成について、公募の結果下欄の5件の新規研究テーマを選考、決定しました。

(敬称略・申請順)

助成研究テーマ 助成研究代表者 助成区分
1
大人は子どもの命を守るモデルになっているか
-交通場面での幼児の模倣学習の実際-
研究概要

 交通場面における子どもの死傷事故を防ぐためには、車やバイクの運転手だけではなく、子ども自身が交通ルールを守り、マナーを身につけ、その上で自分の身を守るためのサバイバル行為をとれるように学習しておかなくてはならない。小学生になると、学校でいろいろな機会に交通安全について学ぶことになるが、幼児期では幼稚園や保育園においてその学習をする機会はほとんどない。「しつけ」として、「そんなことをしたら死んじゃうよ」という脅し文句によって親が子どもに警告していることが多く、子どもは適正な学習をしているとは言い難い。
 幼児は、目で見て体験的に、かつ感覚的に学習するストラテジーを持っている。つまり、周りの大人の行為をまねてモデリング学習を行うのである。これは、道路横断や自動車乗車の際の行動にも当てはまる。
 本研究では、1年間の研究を予定している。まず、実際の交通場面を定点観察し、親子の交通行動を関東と関西でそれぞれ2か所において明らかにする。また、3歳から6歳の幼児を持つ親1000名に対する質問紙調査によって、子どもと共に行動している際の交通行動、子どもの交通場面における事故やヒヤリハットの状況、それらの原因に関する親の認識を詳細に調べ、親が子どもの「良きモデル」になりえているかどうかを検証する。次に、幼児100名に対して、イラストを用いた交通場面での交通行動の認識調査を行い、保護者の不適切な行動(質問紙調査から抽出したケース)の子どもの交通行動における影響を明らかにする。

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筑波大学
教授 徳田 克己
公募(新規)
2
高齢者の自動車運転に関連する認知機能
研究概要

 高齢運転者による交通事故が増加する中、免許更新時の「認知機能検査」(以後、「公安検査」)が義務付けられたが、検査内容については議論の余地がある。申請者らは、「公安検査」で「第1分類」(認知症の疑い)に分類されない場合でも、家族から見て危険な状況が認められる事例を報告した(日本神経精神医学会、2017年10月、東京)。しかし、代替交通手段の少ない地方では、生活ために運転する必要性が高い。また、横断歩道の利用時、歩行者用「青」信号の時間と、歩行完了時間の予測のずれが、横断歩道の中途で「赤」信号に変わるという危険を招きやすい。
 人間は、脳により身体を使いこなして歩行し、自動車はその「身体の延長」でもある。運転も歩行(=「身体の運転」)も、脳の認知機能をフル稼働させる必要がある。
【必要性】
事故ゼロを目指すために、認知機能の評価に関して、自動車運転と横断歩道の歩行の両面を調査する必要がある。一方で、生活の必要性も把握する必要がある。
【目的】
① 生活上の必要性の把握: 本人および家族に対しアンケートを実施し、運転行動と生活の実態を把握する。
② リスク高齢運転者のスクリーニング: 臨床的に診断した認知症とそれ以外の高齢者を対象に、「公安検査」と申請者らが独自に開発した課題(記憶・言語・視空間機能検査、ならびに運転シミュレーター)を行うことで、「公安検査」の妥当性を検討する。

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東北大学
教授 目黒 謙一
3
高齢者講習を分析・活用する認知症の予防と峻別
研究概要

平成30年年度末までに
●高齢者教習の課題を明確にする
 マニュアルに基づいているとは言え、教習所や地域の特性から、それぞれに対応した運営が行われているのが実情である。それを具体的に調査し、行動分析方法により把握する。
●各高齢者教習時のアンケートの分析を可能にする
高齢者教習時、公安の指定のアンケートや各校のアンケートが行われているが、その集計や分析は行われていない。その情報を有効に活用するための交渉や分析効果を示していく
●認知症予防トレーニングの実態を調査する
自動車運転と認知症予防の連携事例(株サムライト)を調査分析する
平成31年年度末までに
●認知症予防トレーニングの効果測定をする調査分析・評価する
自動車運転と認知症予防の連携事例を既に構築している評価方法を使って測定する
●高齢者講習の改善プログラム案を策定する
自動者学校や認知症予防事業者・自治体などと共創しながら改善案を策定する

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九州大学 芸術工学研究院
准教授 尾方 義人
4
対策内容を考慮したゾーン30の評価に関する研究
研究概要

本研究は1年計画であり、目標はより効果的なゾーン30の整備のあり方を提言することである。
(1)研究対象地区の選定(平成30年4月~6月):様々な整備レベルのゾーン30を選定する。整備事例が多く、調査補助者の協力の得られやすい広島県内、名古屋市内から10地区程度を選定する予定である。
(2)交通実態調査(平成30年7月~9月):選定した10地区において「交通量」、「自動車走行速度」、「路上駐車台数」、「交通事故件数」を調査し、整備内容と交通実態の関係性を明らかにする。
(3)住民アンケート調査の検討と実施(平成30年5月~10月):研究対象の10地区の住民と地区内を自家用車で通過する側である周辺住民に対してアンケート調査を実施する。調査項目は、「整備効果に対する評価」、「各種対策ごとの評価」、「ゾーン30の認知度」、「各種対策に対する受容性」等を想定しているが、今後さらに検討する。アンケート調査により、住民の立場からの対策内容と整備効果の関係を明らかにする。
(4)データの分析(平成30年11月~平成31年1月):本研究で得られたゾーン30の交通実態調査、アンケート調査で得られたデータを分析し、対策内容と整備効果の関係性を定量的に示し、モデル化する。
(5)本研究のまとめ(平成31年2月~3月):本研究で得られた成果を報告書にまとめ、今後のゾーン30の整備のあり方を提言する。

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呉工業高等専門学校
教授 山岡 俊一
5
空間認知特性に着眼した高齢運転者が加害者となる出会い頭事故対策に関する応用的研究
研究概要

 本研究では、超高齢社会においてあり得べき無信号交差点空間について提案するため、高齢運転者が加害者となる出会い頭事故が発生する無信号交差点の空間特性を定量的に明らかにするとともに、交差点空間特性からみた高齢運転者が加害者となる出会い頭事故の予測モデルを構築する。また、出会い頭事故への関係性が予想される高齢運転者の無信号交差点における空間認知特性について実験室実験を通じて明らかにし、高齢運転者の空間認知特性からみた無信号交差点における対策案の検討とその効果の推定を試みる。
【平成30年度】
(1)高齢運転者が加害者となる無信号交差点での出会い頭事故発生箇所の抽出
(2)高齢運転者が加害者となる無信号交差点の空間特性の定量化
(3)交差点空間特性からみた高齢運転者が加害者となる出会い頭事故予測モデルの構築
【平成31年度】
(4)交差点空間における高齢運転者の空間認知特性の把握
(5)高齢運転者の空間認知特性からみた無信号交差点における対策案の検討と効果推定

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(公財)豊田都市交通研究所
主席研究員 三村 泰弘
6
発達障害のある子どもたちへの合理的配慮を伴う教育プログラムの開発
研究概要

 申請者の研究グループではこれまで発達障害児者の事故予防および防災教育に取り組んできた。障害者施設や支援者、親の会と連携しながら子どもの安全教育のワークショップを実施してきたが、中でも日常の安全、とりわけ交通安全の指導方法への質問やワークショップ実施の声が寄せられる。研究代表者は交通安全教育の領域でも静岡県教育委員会が事業展開している通学路安全推進において2014年度から通学路交通安全アドバイザーとして交通安全指導を実践している。
 平成29年度は発達障害のある子の親の会と連携して調査の実施および安全に関する勉強会を実施して課題の分析と教育方法の検討を行い教材・教育プログラムの開発を進めてきた。
 平成30年度はこれまでの調査や実践を通して協力関係にある学校等の施設や団体と連携しつつ、開発した教育プログラムの検証、ワークショップによる教育実践を実施し、発達障害児者の教育プログラム・教材開発を支援者や当事者家族の視点から推進・普及していく予定である。 従来の交通安全教育の実践では発達障害児者の特性を考慮に入れた指導や合理的配慮は十分行われてこなかった。このような問題意識を踏まえて本研究では我々の発達障害児者の事故予防及び防災教育の先行研究で得られた知見を基に、交通安全教育における発達障害児の指導法の研究を進めていく予定である。
 具体的には、例えば視覚優位の特性のある子には口頭での指導(音声情報)だけで伝えても内容を理解することが難しいケースが見受けられるが、発達障害児の療育(SST)で用いられる絵カードや写真等による視覚的な手掛かりの提示、寸劇やロールプレイを交えたモデリング学習の理論、指導場面の空間的、時間的、内容的構造化の理論を援用することで、従来の指導では適応が難しい子どもたちにも理解しやすいような教育プログラムおよび教材の開発を目指している。
 平成29年度の調査によって明らかになった知見を基にして、視覚教材を用いるとともに身近な道路の写真や動画を見て振り返りながら子どもたち自身がルールの意味を学び自分たちの安全のルールを創出できるような教育プログラムの開発と普及を検討している。

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社団法人 PORO
代表理事 村上 佳司
公募(継続)
7
ウエアラブルNIRSを用いた自動・手動運転時のドライバの脳活動データベースの構築と評価
研究概要

 本研究は平成28年度から平成30年度の3年計画として、それぞれの年度の目標(平成28、29年度については成果)は次のとおりである。
平成28年度:
OEG-16および小型NIRSを用いて、自動運転、手動運転、自動・手動切り替え時の脳活動と運転行動を計測した。その結果、手動運転時には前頭葉の脳活動が活発であるが、自動運転を行っている場合は、前頭葉の脳活動が低下することがわかった。
平成29年度:
新型ウエアラブルNIRSを使用して、ドライビングシミュレータを用いて、運転中の脳活動を実験参加者10名程度に対して実施し、特徴を分析した。
平成30年度:
新型ウエアラブルNIRSを用いてドライバの脳活動を常時計測できるシステムとして整備する。手動運転に対して10名程度の計測を行い、脳活動データベースを構築し、活用できるようにする。自動運転車両については、菅沼直樹、米陀佳祐について自動運転時、手動運転時についての計測を複数回実施する。実験環境は一般道路および自動運転を模擬したシミュレータ環境とする。そのために、シミュレータ実験においてドライバ特性を計測した経験を有する研究者の協力を仰ぎ、ドライバの脳活動の計測と評価を行う。

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日本大学
教授 綱島 均
8
ドライブレコーダによる実事故映像を用いた自転車・歩行者事故発生要因の解明
研究概要

 これまで長年にわたり交通事故分析が行われてきたが、未だ事故発生の要因と防止方法は確立していない。申請者らは愛知県産業振興課とタクシー協会と連携して、実事故のドライブレコーダの映像データを収集している。このデータベースによって、運転者、自転車、歩行者の事故に至るまでの行動や衝突状況を知ることができる。 本研究では「実事故とヒヤリハットのドライブレコーダによる映像をもとに、事故要因の解明し、有効な事故防止対策の提案する」ことを目的とする。
平成29年度の分析から、自転車事故は四輪車が0。9G以上の減速度を必要とするエリアに入ることで起き、事故発生要因が主として、運転者の認知の遅れと、自転車乗員の直前飛び出しの2つに分けられることがわかった。
 平成30年度は、室内映像から運転者の視線も考慮した事故要因の分析方法を確立する。また、収集した全事故映像について事故再現をおこなうことで、自動ブレーキによる事故回避およびセンサー等の性能向上による効果を明確にする。これによって、自動運転の車において、回避できない事故がどのような形態のものか明らかにする。これらの回避困難な事故については、マルチボディプログラムによってヘルメットによる傷害防止効果を調べる。
 平成31年度は、歩行者事故についても調べ、自転車事故との違いを明らかにする。

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名古屋大学大学院
教授 水野 幸治
9
救命救急センターと連携する交通事故自動通報システムによる交通弱者の被害軽減
研究概要

 平成29年度までの研究において、落下による誤検知を防止した事故検知・通報アプリケーションを開発し、ダミー人形を用いた衝突実験(計3日間、約10台分)で加速度データを収集した。また、自動操縦ドローンが、事故現場の上空まで、安全なルートを選択して自動飛行し、撮影した映像をWebサーバ上にアップロードし、インターネット上でどこからでも確認できるシステムを開発した。ユーザの状態(室内/屋外歩行/自転車移動/自動車移動)の判別システムも平成29年度内に完成予定である。
 平成30年度は、判別したユーザの状態と収集した事故発生時のデータから、被害状況を推定し、救急隊の出動が必要な事故を判別(出動トリアージ)する人工知能(AI)を構築する。重症の可能性が高い場合には、スマートフォンが事故情報を救急隊に通報するとともに、ドローンが事故現場の空撮映像を救急隊に届ける。さらに、救急車を追従するドローンの空撮映像から、救急車の進路の道路状況(渋滞など)から適切な経路を助手席の救急隊に提示し、到着までの時間を短縮する。
 平成31年度には、交通事故が発生した場合に通報する一般公開用スマートフォンアプリを開発し、市販のドローンとサーバを利用したパッケージ化された技術基盤を利用可能とする。

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佐賀大学大学院
准教授 中山 功一

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