交通安全コラム

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地上最高速の争い(8)―ジャメ コンタン号の先進性―

前回は、伯爵が使用したジャントー車とジェナツィーのクルマの技術的な変遷を紹介した。
今回は、ジャメ コンタン号からジェナツィーの勝因を考えてみよう。

◆ジェナツィーの勝因
二人のヒーローが、同じような電池を使い、同じような重量で速度記録を競ったが、伯爵がそれ以上の戦いを諦めたように見える。経済的には伯爵の方が有利だったと考えられるが、何故ジャメ コンタン号は伯爵を振り切ることができたのだろうか、その勝因を考えてみよう(図)。

勝利を祝う人たちに囲まれたジェナツィーとジャメ コンタン号

◆空気入りタイヤ
まず、空気入りタイヤの使用である。自動車の走る・曲がる・止まる、のすべてはタイヤと路面間の摩擦力に依存している。それにはタイヤ接地面が路面の凹凸に密着してグリップすることが必要である。それを考えると、固いソリッドのタイヤに対する柔軟な空気入りタイヤの優位性は、非常に大きいものと考えられる。駆動力の路面への伝達がはるかに優れているばかりか、走行安定性を改善し、この安定性が高速走行を容易にした。これに反し、ソリッドタイヤの伯爵のクルマは不安定で、クルマの進路を維持するためにドライバーが奮闘しているのが見て取れた、という報告がある。伯爵は、それ以上の高速走行は困難と考えたのではないだろうか。

◆モーターの限界
勝因の他の一つは、ジェナツィーがモーターを高速で回転させる方法を発見して、モーターを改良したことであると考えられる。改良の内容に触れている文献はないので、これは、あくまでも仮説である。
彼らが使った直流モーターは、原理的には発電機と同じ構造なので、回転すれば逆向きの電気が起きて、外部から供給する電流を阻もうとする。そのため、電流の増加に限界があり、最高回転数が決まってしまう。

◆弱め界磁
この限界を高めるため、界磁の磁力を弱めて逆起電力を低下させる方法があり、これは「弱め界磁制御」と呼ばれ、直流モーターを使った電車などで使用されている手法である。ジェナツィーがモーターの回転数を上げることができたのは、この方法を採用したと考えるのが自然である。
発明家のジェナツィーだからこの改良ができ、伯爵とジャントー連合軍は対策を見いだせなかった。これが、彼らが記録争いから脱落したもう一つの理由であろうと考えられる。

今回は、ジェナツィーの勝因が空気入りタイヤとモーター制御技術であることを推測した。
ジェナツィーは数年後に奇妙な出来事で命を落とす。次回は、そのエピソードを紹介する。

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