交通安全コラム

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自動車誕生前史(19)―自動車用エンジンの開発―

前回は、オットーによる4サイクルエンジンの完成と、新たなヒーローの出現を紹介した。
今回は、新たなヒーロー、カール・ベンツの自動車用エンジンの開発の経過を紹介する。

◆電気点火での信頼性
ベンツが1878年に開発した2サイクルエンジンは、小さな発電機と結ばれた誘導コイルが高電圧を作り出し、プラチナ電極の間で火花を飛ばす点火装置によって、信頼性を高めることに成功した。このエンジンは、博覧会で燃費一位のお墨付きも獲得し、好調な売り上げで彼の自動車開発を後押しした。

◆特許紛争
ルノアールは、1883年に4サイクルの新エンジンを開発し、燃費の改善で大歓迎されたが、オットーから特許侵害で告訴された。ルノアールは、オットーの特許出願前の1862年に発表されていたフランス人ボー・ド・ロシャの点火前に混合気を圧縮する効率向上の原理を示した論文で対抗して勝訴し、1886年にオットーの特許権が消滅した。

◆重さはこびと、性能は巨人
自動車用エンジンは軽量化が必要である。「重さはこびと、性能は巨人」の合言葉は、現在でも変わっていない。しかし、ベンツの2サイクルエンジンは現在のものとは異なり、圧縮空気溜や混合気供給の加圧ポンプなど機構が複雑で、重量の軽減には限界があった(図1)。そこで、オットーの特許が失効したため、ベンツは新エンジンに4サイクルを採用した。

ベンツの2 サイクルエンジン

◆気化器
自動車エンジンの燃料は液体が望ましい。しかし、エンジンに供給するためには気体にする必要がある。すでに、ルノアールも液体燃料を使用したクルマを試みてはいるが、気化器の機能も不十分で成功とは言い難かった。ベンツは、気化器のガソリン溜を排気ガスで加熱し、フロート(浮き子)を採用して液面を自動的に維持し、ガソリンの中に空気を通すことで気化を促す機構を開発して、エンジン性能の安定・向上に努力した(図2)。

ベンツが考案した気化器の構造

◆高速回転エンジン
エンジンの出力は、爆発圧力、ピストンの面積、回転数、のどれを増加させても高めることができる。オットーがやったピストン面積の拡大は、エンジンが大きくなり、重量が増加する。ベンツが自動車用に開発したエンジンでは、軽量化のためにピストンの面積を小さく抑えて、高速回転を狙った。当時のエンジンのほとんどは毎分120~150回転だったが、ベンツの試作エンジンは400回転であった。

今回は、ベンツの自動車用エンジンの開発の経過を紹介した。
次回は、ガソリン自動車第1号の誕生と、それにまつわるエピソードを紹介しよう。

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