交通安全コラム

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自動車誕生前史(17)―エンジンの熱効率改善―

前回は、ルノアールエンジンの低熱効率と、内燃機関の熱効率向上の提案を紹介した。
今回は、高熱効率内燃式エンジン完成への歩みを紹介する。

◆行商人とルノアールエンジン
内燃式エンジンの熱効率改善を精力的に進めたのは、意外にも、行商人であったドイツ人のニコラス・オットーであった。彼は、雑貨商のもとで砂糖や紅茶をベルギーやフランスに行商していたため、そこで、ルノアールのエンジンが使われている様子を見る機会があった。

◆ルノアールエンジンの凋落
ルノアールのエンジンは、出現当時は、蒸気エンジンと異なり設備投資が少なく、瞬時に起動でき、停止中は燃料を使わないことで、一時は歓迎されたが、その後、急激に人気を落としていた。その理由は、電気式点火装置の信頼性の低さもあったが、最大の要因はその燃費の悪さだった。

◆二人でエンジン開発
オットーは、エンジンとの出会いで興味をかきたてられ、22歳でエンジンの開発をこころざし、4サイクルエンジンの実験を始める。その後、技術者で砂糖工場の所有者でもあるオイゲン・ランゲンと知り合ったことで、1864年に、二人はエンジン製造会社を設立する。

◆フリーピストンエンジン
1866年の彼らの最初の製品は、クランクを持たず、倒立したシリンダーのピストンからラック(歯竿)が上に延びるフリーピストンエンジンで、ピストンとラックが上にあがる時には平歯車を空転させ、自重で下がる時だけ動力取出し軸を回転させるように、ラチェット(爪車)が設けられていた。出力は1/2馬力程度であった(図)。この構造は、10年ほど前にイタリア人バルサンチとマテゥチの試作で終わったと伝えられるエンジンを基本に、彼らが細部にわたって改良して、連続使用に耐えるようにしたもので、同時に、信頼性の乏しかった電気点火法を火炎点火法に替えている。

オットー・ランゲンの大気圧ガスエンジンの構造

◆燃費半減
爆発圧力を直接取り出さず、作動もぎこちないものであったが、点火前に混合気を圧縮し、燃焼ガスを十分に膨張させるため、燃費はルノワールエンジンの半分にまで改善された。ジジージャラジャラというラチェットの騒音にもかかわらず、その低燃費が受け入れられ、またたくまにルノアールエンジンに代わり、一桁多い数千台を売り上げて、約10年間市場を独占する大成功を収めた。

今回は、効率を向上させたオットーとランゲンの大気圧ガスエンジンの成功を紹介した。
次回は、彼らによる4サイクル内燃式エンジンの完成と新たなヒーローを紹介したい。

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