交通安全コラム

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自動車誕生前史(16)―ガスエンジン車―

前回は、電気利用以前の点火装置の開発と、実用エンジンの出現を紹介した。
今回は、この実用エンジンの性能と内燃機関の性能向上の提案などを紹介する。

◆ルノアールのガスエンジン車
フランス人エチエンヌ・ルノアールは、1860年に彼のガスエンジンを載せた三輪車を製作・公開したと伝えられている(図1)。その後、原始的なものではあるが、気化器を導入し、クルマを液体燃料使用に改造し、パリから近郊の町までの往復18キロを3時間で走ったということである。しかし、それ以降の実験は行われなかったようだ。フランスではこの成功を記念して、1984年に100周年を祝っている。

ルノアールのガスエンジン車

◆ルノアールエンジンの燃費
ルノアールのエンジンは、出力は小さかったが、石炭ガスさえあればどこでも使え、静かに動いたので、設備に金のかかる蒸気機関に代る小動力として、小企業に歓迎された(図2)。しかし燃費は良くなかった。燃料エネルギーをどれだけ動力に変換できるかを表す「熱効率」が4%程度と推定されている。現在の優れたガソリンエンジンの30%以上の熱効率を考えると、効率は極めて劣っていた。

ルノアールの電気点火式ガスエンジン

◆熱効率の改善
ルノアールのエンジンが実用化した直後から、効率を高めるためには、混合気を点火の前に圧縮するのがよいというアイデアが、ドイツとフランスで相次いで提案された。その直後の1862年に、フランス人理論家のボー・ド・ロシャが、高効率を得るためのエンジンの作動原理4条件を明記した論文を刊行した。それは(1)下降行程を十分に使って混合気を吸入。(2)次の上昇行程を十分に使って混合気を圧縮。(3)上死点の近くで点火して、下降行程を十分に使って膨張。(4)次の上昇行程で排気ガスを十分に排出、というものである。これはまさに、現在の4サイクルエンジンの作動原理そのものである。

◆点火の困難増大
明確な設計指針が示されたにもかかわらず、これに従ったエンジンが具体化するには、さらに10年以上の歳月を要した。理由は、圧縮による混合気の圧力上昇が、点火の困難さを増大させたことである、と考えられる。
点火には、すでに紹介したように、バーネットの火炎点火法、ニュートンの熱管点火法、ルノアールの電気点火法が出揃っていた。しかし、当時の電気点火法は、高い圧力の混合気では役に立たず、火炎法と熱管法の改良が行われた。

今回は、ルノアールのエンジンの性能と内燃機関の性能向上の提案を紹介した。
次回は、高熱効率4サイクル内燃式エンジンの完成への努力を紹介したい。

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