交通安全コラム

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自動車誕生前史(14)―燃焼圧力の利用と点火法―

前回は、赤旗法時代に、大気圧機関の内燃エンジンが実用化された経緯を紹介した。
今回は、燃焼時の圧力上昇を直接動力として取り出す方法が模索される経過を紹介する。

◆燃焼圧力動力化の特許
蒸気乗合自動車全盛期の1820年代に、英国人サミュエル・ブラウンが、燃焼のエネルギーを動力として取り出すエンジンを初めて実用化したが、それは初期の蒸気エンジンと同様、燃焼ガスを冷却してその真空を利用するものであった。現在のエンジンに通ずる、燃焼時の圧力上昇を直接動力として取り出すアイデアは、英国人ロバート・ストリートの1794年の特許に記録されている。

◆ストリートのガス爆発エンジン
特許によれば、ストリートのエンジンは、ワットの蒸気機関と同様、レバーを介して負荷となる水ポンプのピストンを動かす構造である(図1)。燃料はテレピン油で、気筒内の底部の熱せられた鉄片に滴下されて気化し、吸入空気と混合する。ピストンが上昇して点火孔を通過した時に点火され、その爆発圧力でピストンが上昇を続けてポンプを駆動する、と説明されている。

ストリートの内燃式エンジンの構想図

◆明らかでない作動原理
しかし、ポンプのシリンダーに水が入っているのに、どうやってエンジンのピストンを点火孔まで上昇させるのか、点火孔の構造はどうなっているのか、など不明な点が多い。
のちにフランスで実用化された内燃式エンジンは、この、混合気を行程の途中で点火する原理を採用しており、先見の明はあったが、特許だけで製作は行なわれなかった。

◆卓越したバーネットのアイデア
内燃式エンジンの、次の大きな進歩は、同じく英国人、ウイリアム・バーネットの1838年の特許に見ることができる。彼のエンジンの特徴は、混合気を点火する前に気筒内で圧縮する、というアイデアを盛り込んだことである。この原理こそが、性能向上の強力な手段で、現在の内燃式エンジンの隆盛をもたらした卓越した発想である(図2)。

バーネットの1号エンジン

◆バーネットの点火装置
しかし、彼のエンジンの構造は極めて複雑で、当時の技術では製作できず、この発想の実用化の名誉は、約40年後にドイツ人に与えられることになる。
ところが、彼の発明した点火装置のアイデアは優れたもので、その後、電気点火法が主流となるまで、約60年間にわたって幾つかの内燃式エンジンに応用され、内燃機関の歴史に名前を遺している。

今回は、燃焼圧力を直接動力として取り出す方法が模索される経過と点火法を紹介した。
次回は、バーネットの点火装置の詳細と、新たな点火機構の提案を見ていく。

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