交通安全コラム

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自動車誕生前史(7)―米国での蒸気移動機械の出現―

前回は、英国でマードックの模型に影響されたトレビシックによる蒸気車開発を紹介した。今回は、米国での蒸気移動機械の出現を紹介する。

◆アイデアマンのエバンス
米国では、車鍛冶から身を起こして、繊維工業の分野で幾つかの発明をしたオリバー・エバンスが、高圧蒸気を使う高出力エンジンを開発した。蒸気の力を馬車に利用する方法を検討し、1789年に蒸気乗合自動車の特許を申請した。しかし、資金難でクルマは作らなかった。彼は、1794年に、出資者を募るために設計図を英国に送っており、トレビシックがそれを見ている筈だ、と信じる人は多い。

◆平底船で浚渫と清掃
エバンスは、1805年に、ドックの浚渫と清掃の問題で困っていたフィラデルフィア市を説得して、蒸気作動の浚渫機械製作の契約を取り付けた。それに関する図面は残っていないが、彼による記述はある。しかし、それには矛盾があり、誇張されている可能性が高い。5馬力の蒸気エンジンで駆動される、長さ10m、重さ15トンの平底船である。

◆川までの移動に車輪
ところが彼は、長い間の念願だった蒸気機関による地上走行の可能性を実証するため、この船に四つの車輪を付けた(図1)。これには、彼の工場から川までは2キロ以上あるので、移動のために必要だからそうしたのだ、という解釈もある。車輪は、当然、蒸気機関に連結されていたのだろう

エバンスの水陸両用車

◆芝刈り機エンジンの小型トラクター
5馬力のエンジンで15トンの船を動かすエバンスの水陸両用車は、小型トラクターを芝刈り機のエンジンで動かすようなものである。うまく機能したはずはないという説があり、浚渫に失敗し、数年後にスクラップとして処分されたことになっている。しかし、一方では、広場から川まで自力で移動し、そこで水掻きに切換えて、帆船が苦労している向かい風に逆らって川を下り、数年間にわたって浚渫作業を行った、という説もある。

◆世界初の水陸両用車
もし、これが事実なら、エバンスの浚渫機械は、世界で初めての水陸両用車であり、同時に、米国で初めての人工動力による地上の移動機械でもある。ちなみに、米国での初めての人工動力の水上移動機械としては、1785年のフィッチの水掻きカヌー式蒸気船がある(図2)。しかし、この分野でも、1776年にフランスが「世界初」の名誉を獲得している。

フィッチの水かきカヌー式蒸気船

今回は、米国で、世界初の蒸気動力水陸両用車が出現した可能性があることを紹介した。
次回は、このあと、英国で蒸気自動車が目覚ましく発展する様子をたどっていきたい。 

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