交通安全コラム

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自動車誕生前史(4)―世界初の人工動力車(3)―

前回は、世界初の人工動力移動機械、キュニョーの蒸気車の技術内容を解説した。
今回は、引き続き、このクルマの操舵機構と走行性能について解説する。

◆転舵機構負担大  
このクルマでは、蒸気供給の都合上、ボイラーとシリンダーが一体的に組み付けられ、シリンダーと前輪とは、相対位置が変っては動力を伝えるために困るので、結局、三者が一体的に結合されている。1輪の前輪にボイラーとシリンダーの重量が加わるこのレイアウトは、不整地走行には合理的ではあるが、しわ寄せが転舵機構に集中する。

◆2段減速歯車機構
このクルマでは、方向変更の際には、前輪より前の装置すべてが、前輪とともに左右に首を振ることになる(図1)。そのため、大きな力が必要になるので、2段階の歯車減速機構が設けられ、操縦者の腕の力で前輪の向きを変えることができるように設計された(図2)。

キュニヨーの蒸気車の転舵時
キュニヨーの蒸気車の操舵機構

◆貧弱な走行性能
目標走行性能は、時速7.8キロだったようだが、実力は、時速4キロという説もあるが、3キロ程度だったと考えられる。しかも、蒸気圧を維持できず、10分から12分しか走れず、蒸気圧が下がると、停止して水と燃料を補給し、ふたたび蒸気圧が高まるのを待つ必要があった。

◆貧弱な車輪
1号車が壁に衝突して全損になった事故の原因を推察してみよう。クルマは、原動機と車輪さえあれば、とりあえず走らせることはできる。しかし、安全に走らせるためには、必要に応じて適切にクルマの向きを変えることのできる操舵性能と、短い距離でクルマを止めることのできる制動性能が必要である。キュニョーのクルマは、残念ながらこの二つの性能が極めて貧弱だった。その元凶は車輪である。

◆適切な総合レイアウト  
このクルマの車輪は、馬車を踏襲して木製で外周に鉄板が張りつけられていた。しかし、自動車と馬車では、車輪の役割がまったく異なる。馬車では、ただクルマの重量を支えて、馬の動きにつれて転がっていればよかった。しかし、キュニョーのクルマでは、重量を支えるほかに、車輪と路面との接触部分で、曲げる力や止める力を作り出さなければならなかった。ところが、鉄板張りの車輪は、すべりやすく、この力が不十分で、自在の操縦が困難であった。

 驚くべきことに、最近、このクルマのレプリカが造られ、走行の模様と駆動メカの作動をUチューブで見ることができる。(https://www.youtube.com/watch?v=lYWnxUxZlmwなど)

今回は、キュニョーの蒸気車の操舵機構と走行性能を解説した。
次回は、英国での蒸気自動車の誕生の経過を紹介する。

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