交通安全コラム

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自動車誕生前史(2)―世界初の人工動力車(1)―

前回は、蒸気機関の効率を画期的に向上したジェームズ・ワットの業績を紹介した。
今回は、蒸気機関を世界で最初に原動機として採用したフランスの移動機械を紹介する。

◆フランスの進んだ発想
英国では、その後1782年に、ピストンの往復運動を回転運動に変換する機構も導入され、蒸気機関の改良が進められたが、世界で最初に蒸気機関をクルマの動力に採用したのはフランスである。それには、同時代の英国の蒸気機関より一段と進んだいくつかの技術が試みられており、その突然の出現に驚かされる。

◆キュニョーの蒸気車
このクルマは、戦場で大砲を運搬するために開発されたものと考えられている。広い荷物スペースを確保するため、ボイラーとエンジンが前方にまとめて配置され、二つのシリンダーで前輪を駆動する三輪車の形式をとっている。フランス生まれの技術者キュニョーが、当時のフランス軍隊の要請を受けて、数年かかって1769年に1号車を完成した。

◆交通事故第1号
この1号車は、時速3.5キロ程度で、ごく短距離の走行は行ったようだが、思うように曲がれず、ブレーキも十分に効かず、障害物にぶつかって壊れてしまう。この時の様子を描いた版画が残されており、クルマの歴史でのはじめての交通事故として有名である(コラム第1回参照)。キュニョーは、それにめげず1771年に2号車を完成するが、政治状勢が変化して軍部の関心が薄れ、走行されず兵器庫に保管されていた。そのクルマは、幸い散逸を免れ、現在、パリの技術工芸博物館のロビーに展示されている(図)。

図 世界初の人工動力による移動機械

◆技術者キュニョー
この人類初の人工動力による移動機械を製作したのは、1725年生まれのニコラ・ジョセフ・キュニョーと呼ばれる技術者だった。彼は、工兵学校を卒業したあと、オーストリア陸軍の技師として、当時の先端技術を身に付けた。フランスに戻り、騎兵銃の改良を行い、軍事技術に関する著作も遺している。彼は、ルイ15世の外務大臣からの指示で、数年かけて、大砲輸送のための手段を検討し、模型による走行実験を行ったとの記録も見られる。

◆先進的な熟慮の設計
現存している2号車を観察すると、駆動用蒸気機関は高出力を得るための先進的な機構が導入され、車両の設計レイアウトにも当時の走行環境に適合するための最大限の努力が払われていることがわかる。

今回は、ジェームズ・ワットが蒸気機関を改良する直前に出現した、先進的なキュニョーの蒸気自動車を紹介した。
次回は、このクルマの技術的な内容を解説する。

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