交通安全コラム

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自動車誕生前史(1)―蒸気エンジンの改良―

前回は、情報通信技術システムを統括するITS Japanと、その将来ビジョンを紹介した。
今回からは、内燃機関を原動機とする自動車が誕生するまでの技術の発達史を見ていく。

◆蒸気機関
内燃機関を原動機とする自動車の出現以前、蒸気自動車が多数実用され、地上最高速の歴史にも幾つかの記録を残してはいる。しかし、その蒸気機関も、自動車の原動機として使用できるようになるまでには、出現後100年以上の年月を要した。

◆ジェームズ・ワット
蒸気機関は、英国人のジェームズ・ワットが薬缶の蓋を蒸気が押し上げるのを見て発明した、と理解している人が少なくないが、誤りである。彼は、すでに使われていた蒸気機関の効率を大幅に向上させて、蒸気機関を発展普及させた人物である。ワットの業績を正しく理解するには、それ以前、1712年に、ニューコメンが実用化した蒸気機関の作動原理を知る必要がある。それは、蒸気で作動はするが、仕事をするのは大気の圧力である。そのため、「大気圧機関」と呼ばれている。

◆大気圧機関
その作動原理を説明する。まず、負荷の自重でピストンが上昇し、ボイラーから蒸気がシリンダーに入る(図1)。ピストンが上端に達すると、蒸気バルブを閉じて、シリンダー内に水を噴射して蒸気を冷却して凝結させる(図2)。するとシリンダー内の圧力が低下するので、ピストンが上面の大気圧で押し戻される。この力を梁で反対側に伝え、排水ポンプなどを動かす仕事をさせる。ピストンがシリンダーの底に着くと蒸気バルブを開き、ピストンが上がり、再び蒸気がシリンダーに入ることで作動が繰返される。

図1 ニューコメンの大気圧エンジンの作動(1)
図2 ニューコメンの大気圧エンジンの作動(2)

◆凝結器の導入
ワットの改良は、水で冷やした「凝結器」を設けたことである(図3)。ピストンが上昇した後、バルブを切り替えてシリンダーと凝結器を連通すると、蒸気が凝結器に入って凝結するので、シリンダー内へ水を噴射することなく、シリンダー内の圧力を下げることができる。ワットの機関では、シリンダーを冷やさずに済むばかりか、保温することもできるため、シリンダーを暖かく保つことが可能となり、蒸気の凝結損失を減らすことができ、蒸気の消費量を1/4程度にまでに低減することができた、と言われている。ワットがこの発想を得たのが1765年で、実用的な機関として完成したのが1776年である。

図3 ジェームズ・ワットの改良=凝結器の導入

今回は、蒸気機関の効率を画期的に向上したジェームズ・ワットの業績を紹介した。
次回は、蒸気機関を世界で最初に原動機として採用したフランスの移動機械を紹介する。

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