交通安全コラム

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道路交通情報工学(9)―路車間通信実用化へ―

前回は、カーナビをディスプレイとする警察庁主導による路車間通信システムの提案と実験を紹介した。
今回は、既に解説した二つの開発プロジェクトを融合させた実用化への歩みを紹介する。

◆技術的見通し
第117回で紹介した、建設省(当時)が主導して1990年まで開発が続けられたシステム“RACS”と、前回紹介した、1988年と1990年に先行実験が行われた警察庁主導のシステム“AMTECS”は、それぞれの狙いには大きな違いはなかったが、それぞれの開発で技術的な見通しは得られた。

◆実用化の課題
しかし、実用化には、AMTECSでのテレターミナルの設置は、主導した警察庁の管掌範囲ではない上に、多数の設置が必要になる。一方、RACSで路上にビーコンを設置するのは、道路を管轄する建設省の管掌範囲と言えるが、肝心の道路交通情報の収集は警察庁に頼らなくてはならず、どちらも、単独では進めることはできない。

◆VICS開発スタート
そこで、実用化を前提に、この課題を解決するために、二つのシステムを融合させることが判断され、1990年に、警察庁、郵政省(当時)、建設省による「道路交通情報通信システム(Vehicle Information and Communication System:VICS)協議会」が発足した。翌1991年に、VICSの早期実用化を期して、201の法人・団体を会員とする「VICS推進協議会」が発足した。

◆3種の通信メディア
このシステムは、交通管理者、道路管理者などからの情報を、道路交通情報センター等を経由して収集し、FM多重放送、光ビーコン、電波ビーコンの3種の通信メディアで自動車に伝達し、渋滞・工事等の道路交通情報、経路誘導情報その他のサービス情報をリアルタイムで車載ナビゲーション装置からドライバーに提供する(図1)。

図1 VICS の概要
図1 VICS の概要
出典:http://www.nilim.go.jp/lab/qcg/japanese/2reserch/1field/11vics/index.htm

◆1996年情報提供開始
1993年、VICSの公開デモンストレーション実験は、米国と欧州から道路交通情報工学の専門家も招いて行われ、試乗者から好評を得て成功裏に終了した。1995年、「(財)道路交通情報システム(VICS)センター」を設立し、1996(平成8)年4月から首都圏を初めとして情報提供を開始し、2000年には沖縄、2003(平成15)年2月の残りの北海道地域を最後に、日本全国がサービスエリアに収められた。

◆世界に誇るVICS
RACSとAMTECSの長所を融合させたVICSは、放送開始から15年後の2011年に3000万台を、さらに2013年には4000万台超えるカーナビの普及との二人三脚で(図2)、利用が加速度的に増加し、世界に誇る我が国の路車間通信システムが見事に構築された。

図2 VICS対応車載器累計出荷台数 
図2 VICS対応車載器累計出荷台数 
出典:http://www.rbbtoday.com/article/img/2011/05/02/76668/134023.html

 
今回は、開発を進めていた二つのシステムを融合したVICSの実用化までの経過を紹介した。
次回は、カーナビと携帯電話の組み合わせによるシステムのさらなる進化を紹介する。

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