交通安全コラム

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道路交通情報工学(8)―カーナビ利用の路車間通信―

前回は、我が国の路車間通信の実用化を促進することになる世界初のカーナビゲーション装置(以下カーナビ)の進化を紹介した。
今回は、カーナビをディスプレイとする路車間通信の発想とその開発をたどる。

◆ナビに交通渋滞情報
交通情報提供の高度化の意向を持っていた警察庁は、ナビの出現により、新しい構想による路車間通信システムの可能性の検討を行った。その結果、ドライバーが最も知りたい進路の交通渋滞の状況をナビの位置情報に付加してディスプレイに表示する、という発想が生まれた。

◆AMTICS
警察の所轄する交通管制センターで収集した渋滞情報と、それに関連した交通情報を、郵政省(当時)で新しく計画しているテレターミナルシステムを通じて、リアルタイム・オンラインで自動車に提供する。この基本方針が固まり、“新自動車情報通信システム(AMTICS)”と命名された(図1、2)。

図1 AMTICSのシステム概念図
図1 AMTICSのシステム概念図
出典:岡本博之「新自動車交通情報通信システム(AMTICS)について」
IATSS Review Vol.17 No.2
図2 AMTICSの車載ディスプレイの構成
図2 AMTICSの車載ディスプレイの構成
出典:岡本博之「新自動車交通情報通信システム(AMTICS)について」
IATSS Review Vol.17 No.2

◆開発スタート
これを背景に、1987年、45社を会員とする“新自動車情報通信システム実用化協議会”が発足し、その下に“AMTICS開発委員会”が設置され、警察庁、郵政省、メンバー会社からの委員によって、システムの設計、試作、実験の作業がスタートした。

◆地情報域と広域情報
このシステムの機能は、①自車の現在位置の表示、②交通渋滞、交通規制、気象状況などの提供、③駐車場の位置と利用状況、観光地の位置などの情報提供、④車両位置の把握、業務連絡、である。渋滞情報の場合は、ナビ画面に表示される情報はテレターミナルから8キロ以内の地域情報と県程度の範囲の広域情報の二種類が用意され、ドライバーが選択できる。

◆二回の先行実験
1988年、東京都心部で3か月にわたる先行実験が、テレターミナル実験局を用いて、12台の実験車の参加で行われた。この実験でAMTICSのハードウエアとソフトウエアの基本骨格が固まった。1990年には、大阪の「国際花と緑の博覧会」で、AMTICSのPRをかねて、交通対策の一環として二回目の実験が行われ、花博終了後も実験が続けられた。

◆普及の障害
AMTICSに対する一般の人々の期待が大きいことが、アンケートの結果で明らかになった(図3)。しかし、当初予定していたテレターミナルの利用は、広域的なサービスエリアを前提とする自動車交通では多数のターミナルが必要であることが明らかになり、普及は容易ではないことが予想された。

図3 AMTICS車載機器のアンケート結果の一部
図3 AMTICS車載機器のアンケート結果の一部
出典:岡本博之「新自動車交通情報通信システム(AMTICS)について」
IATSS Review Vol.17 No.2

 
今回は、警察庁主導によるカーナビをディスプレイにする路車間通信システムの開発を紹介した。
次回は、このシステムの実用化に向けた動きを紹介する

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