交通安全コラム

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道路交通情報工学(5)―我が国の黎明期の技術開発―

前回は、ヨーロッパでも米国同様、実用化は、車車間通信による衝突事故防止から始まりそうな動向をお伝えした。
今回からは、我が国での道路交通情報技術開発の経過を見ていく。

◆事故・渋滞・公害
我が国は、欧米先進国と異なり、20世紀中ごろまでは道路交通が主要な輸送手段ではなかった。しかし、1960年代の経済と産業の発展による急激なモータリゼーションの結果、事故・渋滞・公害という社会問題が発生した。その結果、警察の交通管制センターが設置され、1966年には、初の高度な道路交通情報技術として都心36か所の交差点で信号制御が行われた。

◆活動の特徴
我が国の道路交通の情報化・知能化活動の欧米と比較した特徴は、①官庁と企業と大学の協力での多くの研究開発が継続的に行われたこと、②交通管理センターをはじめとする実用的なシステムの設置と普及が比較的早期に行われたこと、である。1973年には、首都高速道路管制センターが設立されている(図1)。

図1 首都高速道路管制センター
図1 首都高速道路管制センター
出典:www.road.or.jp/event/pdf/56-2-5.pdf

◆CACS
同じ1973年に通産省工業技術院(当時)が、“自動車総合管制システム(CACS)”の開発をスタートし、1977年には都心で1年間の試験運用を行った。経路誘導情報が、交差点近傍の路上装置から微弱電波によってクルマに送られ、路上装置の情報は、センターから定期的に更新され、時々刻々の交通状況を考慮した経路誘導が行われた。これは、都市内で実験を行った世界初の動的経路誘導システムである。

◆実験段階にとどまる
 しかし、1970年代には、現在ほど情報処理技術が発達しておらず、特に車載機器の能力が限られていたことと、システムの主眼が交通管理に置かれて、路上施設と管理センターの比重が大きいシステムとなっていたため、実験ではよい成果が得られたものの、実用化のための整備主体と運用主体を決めることができず、開発は実験段階にとどまり、1979年に終了した。

◆RACS
その後1984年に、道路新産業開発機構のもとに路車間情報システム研究会が発足し、1986年に建設省土木研究所(当時)と民間25社の共同研究でコンセプトをまとめて、“路車間情報システム(RACS)”がスタートした。これは、路上に設置された通信機(ビーコン)と車載機器の間で通信を行い、①ナビゲーション機能、②情報サービス機能、③個別通信機能、を提供するものであった(図2)。

図2 路車間情報システム(RACS)のコンセプト
図2 路車間情報システム(RACS)のコンセプト
出典:柴田正雄 「路車間情報システム(RACS)について」
      IATSS Review Vol.17 No.2

 
今回は、我が国の道路交通情報技術開発活動の特徴、黎明期の活動内容をお伝えした。
次回は、我が国の路車間通信の実用化を促進したカーナビゲーション装置の出現を取り上げる。

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