交通安全コラム

交通安全コラム

道路交通情報工学(3)―欧州の道路交通情報技術開発―

前回は、米国の技術開発が経路誘導や案内から衝突事故防止へと向かった経過を紹介した。
今回は、ヨーロッパの道路交通情報技術開発の経過を見ていく。

◆プロメテウス計画

ヨーロッパでは、1980年代に、各国が共同で先端的科学技術の推進を図る“ユウレカ”計画が進められ、その一環として、我が国や米国より遅れていた道路交通の情報化、ハイテク化を目指す民間企業主導の“PROMETHEUS”計画が1986年にスタートした。これには、安全性向上、燃費改善、道路容量拡大、運転負担軽減、環境負荷低減などでの技術開発が含まれていた。

◆ボトムアップの研究開発
このボトムアップの計画には、民族系の14の自動車メーカーが関わり、車車間通信によって適切な速度と車間距離で走行し、レーン変更や追越し、合流時の安全を確保する協調走行や、路車間通信による経路誘導、交通情報システムが扱われ、多くのプロジェクトと各国にまたがる実証実験が推進された。自動運転技術の開発も行われ、その一部は、既に、このコラムで紹介した。この研究開発は、8年間にわたり続けられ1994年終了した。

◆トップダウンの要請
一方、これと同時期に、欧州委員会(EC)は欧州政府会議からのトップダウンの要請を受け、運転者への高度な情報の伝達や、インテリジェント化された自動車同士、あるいは自動車と道路インフラが相互に連絡する、新しい道路交通環境の構築を目標に、“DRIVE”計画と名付けて必要な通信技術や情報処理技術の問題点と標準化に向けた検討項目を設定した。

◆全欧的交通ネットワーク
その結果を踏まえて、この計画は、多数の機関の提案から56のテーマを選び、次のステップに進んだ。そこでは、道路交通だけではなく、道路・鉄道・海上交通間のインターフェース、交通輸送手段の複合化にも焦点が当てられ、全欧的な交通ネットワーク構築への研究開発が展開された。

◆ソクラテス計画
経路誘導や交通情報におけるマンマシンシステム、機器、 通信プロトコルの標準化に関する分野では、携帯電話通信を利用する動的な経路案内、駐車場案内、公共交通機関案内、緊急サービスなどの汎ヨーロッパ展開を目指す“SOCRATES”計画が、40の団体が関わって、ロンドン(英)、リヨン(仏)、アムステルダム(蘭)、ミュンヘン(独)、などで開発実験が推進された(図1、2)。

図1 “ソクラテス”の基本概念
図1 “ソクラテス”の基本概念
出典:Ian Catling, et al. “SOCRATES – What Now?”
図2 “ソクラテス”の車内ディスプレイ
図2 “ソクラテス”の車内ディスプレイ
各種案内とサービス要請など、充実した情報提供が立案されていた
出典:Ian Catling, et al. “SOCRATES – What Now?”

今回は、ヨーロッパの道路交通情報技術開発の背景とその展開の経過を紹介した。
次回は、今回に続いて、その後のヨーロッパでの技術開発の進展をお伝えする。

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