交通安全コラム

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自動運転(14)―普及へのハードル(7)失業問題―

前回は、自動運転車普及に及ぼすコストアップの影響とその削減のジレンマを紹介した。
今回は、自動運転車の普及によって生ずる可能性がある失業の問題とその対応を検討する。

◆自動運転の功罪
これまで紹介してきたように、自動運転車が普及すれば、移動と土地利用の効率が向上し、交通事故が減り、運転できない人の移動が容易になる、など大きなメリットが期待できる。しかし、一方では、それに関連して多くの雇用が失われるという懸念がある。自動運転は、生命か職業かの選択を迫る問題である、との極端な見解も見られる。

◆失業の波及
多数のトラック・タクシー運転手や貨物配送人が生活のためにクルマを運転している。自動運転車が普及すれば、これらの多くは、企業の経費節減のために職を失うであろう。さらに、交通事故に関係する救急施設、病院、リハビリセンター、自動車部品産業、レッカーサービス事業、板金修理業や保険会社の仕事が大幅に減少するだろう。

◆赤旗法
しかし、革新技術による失業の問題は、歴史上これが初めてではない。移動手段だけを見ても自動車の出現があった(図1)。

図1 自動車普及初期の米国での広告
図1 自動車普及初期の米国での広告
「馬をやめてクルマにすれば、(御者も不要になり)節約でき、面倒もなくなる」と宣伝している。
出典:http://www.forbes.com/sites/timworstall/2013/08/24/google-to-build-its-own-driverless-cars/

古くは、英国で蒸気自動車が開発された当時、最高速度を極めて低く抑え、事故防止を口実に旗を振る先導者を走らせることを義務付けた、悪法として名高い「赤旗法」を制定させて、その普及を妨げたのは、仕事を奪われることを恐れた馬車業者だった(図2)。

図2 赤旗法
図2 赤旗法
1865年に最高速度が郊外で時速6.4キロ、街中で3.2キロに制限され、1896年になって、やっと時速23キロに引き上げられた。
出典:http://jiko-higaisya.info/road-environment/redflag/

◆技術革新への抵抗
赤旗法は19世紀末まで存続し、鉄道の発展を先導した英国で、自動車産業の発達がヨーロッパ大陸に大きく遅れをとる原因となった。技術の新領域への進出に躊躇すると、競争に敗退する可能性もある。デジタル技術に長期にわたって抵抗し、フィルムと化学の伝統にこだわった米大フィルムメーカーが、結局、ほとんどすべてを失っている。

◆先進的思考
歴史的に見ると、技術革新は、当初はさまざまな障害があっても、普及して人々の生活を豊かにしてきた。自動運転への対応には、関係者は重い判断を迫られている。先進的な思考をするフロリダ、ネバダ、カリフォルニアの米州では、地域のビジネスチャンス拡大を助ける法制度で地域経済に有利な状況をつくろうとしている。自動運転の社会になれば、新たな雇用が創出される可能性もある。

今回は、自動運転の普及によって生ずる可能性がある失業の問題とその対応を検討した。次回は、自動運転車の実用化の見通しに関する最新情報と、米国運輸省の動きを紹介する。

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